活動報告

新年のごあいさつ~令和こそ地方の時代に~(令和2年1月)

2020年01月01日 お知らせ

 新年明けましておめでとうございます。

 昨年は、6月末から7月にかけて鹿児島で、8月には福岡、佐賀、長崎を中心に大雨による甚大な被害が発生しました。改めて、犠牲者、そして被害を受けられた皆様に、心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。

 このように、毎年のように災害の話題に触れざるを得ないことは大変残念でなりませんが、我々は、自然の力に畏敬の念を払いつつも、先人のように、たゆまず全力で復旧、復興に取り組むとともに、新たな防災・減災の仕組みを早急に整えていかなければならないと痛感しています。

 さて、令和の時代を迎え、初めての年明けとなりました。
 当会は、昨年5月、新元号が、万葉集の中の九州、大宰府で詠まれた梅花の歌の序文に由来することを記念して、奈良大学文学部の上野誠教授や九州国立博物館の島谷弘幸館長、福岡県の大曲昭恵副知事を迎え「シンポジウム『令和』の時代を考える~令和こそ地方の時代に~」を開催しました。今回は初の試みとして、会員だけではなく広く一般の方々にも呼びかけ、350名を超える方々にご参加いただきました。
 上野教授のご講演で大変印象に残っておりますのは、日本文化の特色として、古来、日本列島への渡来人移住の波が何度かあり、その人たちに日本の姓(朝廷での地位)を与える氏姓制度で取り込み、現在の日本語と日本文化を創ってきた。したがって、我々のDNAは、ヨーロッパよりも多様だというお話です。
 このような多文化の共生と統合の波が、今また日本に押し寄せています。

 昨年8月、ラグビーワールドカップ2019日本大会を契機としたスポーツや観光等の分野における交流の促進を目的として、当会は福岡県議会及び福岡県とともにオーストラリア訪問団を派遣し、私も参加いたしました。
 オーストラリアは、古くから移民政策に取り組んできた国で、2018年に人口が2,500万人を突破し、1970年と比べ約2倍の増加となっております。人件費高騰などのリスクを抱えているものの、移民を中心に人口は毎年確実に増え続け、2061年には3680万~4830万人まで増える見通しで、このような人口増加傾向が下支えして、経済成長に寄与していると言われています。
 
 転じて、我が国は、これまでにどの国でも経験したことのない人口減少、少子高齢化社会を迎えます。生産年齢人口が大幅に減り続ける中、国力を維持、増進させていくためには、女性、高齢者、障がいのある方などの労働市場への参入や社会活動への参画を更に促進させていくことはもちろん、AI(人工知能)の活用、外国人労働者の適正受け入れといった総合的な対策が求められています。

 こうした様々な個性や能力が、多様性を活かしつつ、ラグビーワールドカップ日本代表チームのようにワンチームとして統合した力を発揮するために鍵となるのは「文化の力」だと思います。価値観を共有するためにはお互いの考え方や文化を理解し、共感することが必要です。
 したがって、これらの対策は、全国一律ではなく、それぞれの地方の実情に応じて、自由な発想で取り組んでいかなければなりません。令和こそまさしく地方の時代にしていかなければならないのです。
  
 今年は、いよいよ東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。
 九州各県でも、事前キャンプ地の誘致や、ホストタウンの登録等が次々と行われています。
 昨年のラグビーワールドカップ2019日本大会では、大会期間中の観客動員数は170万人、1試合の平均観客数につきましては3万7千人を超えたとのことです。私も、地元福岡の試合会場へ観戦に赴き、多くの外国人が観戦を楽しむ姿を見かけました。

 こうした大規模な国際スポーツ大会の開催は、大会後のレガシーを活用したスポーツ振興や関連産業の振興もさることながら、海外との交流を通じ、我が国、ひいては九州について理解していただくまたとない機会です。一過性のイベントで終わらせるだけではなく、引き続き新たなインバウンドに繋がるよう、我々は将来を見据えた取組をしていかなければなりません。

 国際会議等の誘致、いわゆるMICEでも同様です。私が会長を務めております公益社団法人日本獣医師会が当会との連携により誘致活動を進めておりました第22回アジア獣医師会連合(FAVA)大会が、2022年秋に福岡県で開催されることになりました。国内では、1980年の東京大会、1995年の横浜大会に次いで3箇所目、九州では初めての開催となります。この大会を通して、当会が支援する動物の健康と人の健康、さらに環境の健康を確保する“One Health”の理念と実践が更に促進されるとともに、福岡だけではなく九州へのインバウンド推進の新たな契機となることが期待されます。

 そうしたインバウンド対策も含む、広域的な観光振興政策を推進するための財源を確保するため、福岡県では、本年6月の定例会で、宿泊税に関する条例が可決・成立しました。これにより、本会の政策提言である「観光行政推進のための新たな財源措置」に関する取組が実現したことになります。

 このように、当会の政策提言の内容も次々に実現しつつあります。今後とも、提言事項の実現に向けて取り組むとともに、九州の現状と課題を改めて検証し、更に新たな政策提言等を行っていくことを、本年の当会の目標にしたいと思います。また、その先にある、我が国の新しい経済社会システムである真の地方分権型社会の実現という大きなビジョンを見据えつつ、当会の活動をさらに発展させてまいる所存です。
 会員をはじめとした九州の政財界、そして行政機関の皆様方におかれましては、引き続き、当会の活動へのご理解とご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 最後に、「令和」という年号に込められた、一人ひとりの心の平和への希求の思いが実現できますよう、本年が皆様にとりまして、平安、かつ、大きな飛躍の年となりますことを祈念いたしまして、年頭のご挨拶といたします。
 

  令和2年1月吉日

  九州の自立を考える会 会長 藏内 勇夫

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