活動報告

第16回セミナーを開催しました

2020年12月02日 セミナー

 令和2年12月2日、福岡市内で第16回広域行政セミナーを開催したところ、約170名の方々に参加いただきました。
 なお、今回のセミナーは、「洋上風力発電促進福岡県議会議員連盟(会長:吉松 源昭 福岡県議会議長)」との共催にて開催いたしました。

 はじめに、主催者挨拶として、藏内 勇夫 会長が「先月、小泉 進次郎 環境大臣と意見交換を行った。環境保全をしなければならない、地球温暖化防止の手段の一つとして化石燃料の使用をなるべく減らしたいという小泉大臣に、九州の自立を考える会では、エネルギーの安定供給、再生可能エネルギーの促進、そして、人と動物、地球の環境を守るワンヘルス運動を行っているという話をしたところ、一緒にやっていこう、と言っていただいた。
 地球温暖化や乱開発によって生態系が悪化の一途をたどっていて、人と動物の健康が大きく害されていることはご承知のとおりで、現下の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がまさしくその証左。我々はこれを乗り越えて新しい福岡県、九州をつくり上げる、この惨禍を踏まえた新たな進化を遂げなければならない。そのためには、環境への負荷が小さい洋上風力発電は、大変興味深いものである」と挨拶しました。

 また、福岡県議会議長でもある、共催していただいた洋上風力発電促進福岡県議会議員連盟の 吉松 源昭 会長から「地球温暖化が進み、脱炭素社会の実現が世界の課題であるが、世界各国で導入が進み、我が国においても期待されているのが洋上風力発電で、経済的な波及効果も期待できる。
 再エネ海域利用法が制定されたことを受け、福岡県では、まず響灘沖を有望な候補地として、同法の促進区域指定に向けた取組に着手した。この取組の実現のためには、本県が一体となって取り組むことが必要であるため、本県議会として、県執行部と一致協力してその取組を支援し、積極的に活動を進めていくことを決議、宣言した。また、その実動部隊となる議員連盟を設立した次第であるが、本日のこのセミナーが、議員連盟の初めての活動であり、九州の自立を考える会の 藏内 勇夫 会長にお願いして実現できたもので、改めて感謝申し上げる」と、共催者として挨拶をされました。

 来賓を代表し、小川 洋 福岡県知事代理の 服部 誠太郎 副知事から「洋上風力発電は、再生可能エネルギーの中でも非常に規模が大きく、また安定的、効率的でもある。今年2月には、再エネ海域利用法に基づき、響灘沖を促進区域の候補として国に情報提供を行った。今後、この促進区域の指定を国から受けるためには、地域の皆さんのご理解、そして漁業者の皆さんとの合意形成を進める必要があり、国への働きかけも継続して行っていく必要がある。県議会の皆様方には、洋上風力発電を推進する旨の決議をいただいた。さらに超党派の議員連盟も設立をしていただいた。この場をお借りして改めてお礼を申し上げ、また、今後とも引き続きのご支援をお願いする」とのご挨拶を頂戴しました。

 続いて、一般社団法人日本風力発電協会の代表理事 加藤 仁 様から「日本で洋上風力発電を導入する意義」とのテーマでご講演頂き、講演後には活発な質疑応答も行われました。
 ご講演の概要は、次のとおりです。

「異常気象の原因とされるCO2をたくさん排出しているのは、電力で言えば、石炭による火力発電であることから、特に欧州では洋上風力発電を中心に再生可能エネルギーの導入が本格的に進んでおり、実際、欧州の電源構成における風力発電は、2016年に既に石炭火力を抜いて2番目のポジションになっており、実力的にも在来火力発電と遜色ない競争力を持った電源という証明がなされている。また、欧州連合(EU)では、域内の温室効果ガスの排出を2050年に実質ゼロにする目標の実現に向けて、今後10年間で官民で少なくとも1兆ユーロ(約122兆円)規模の投資をする計画を公表した。これには、石炭にまだ依存する国が多い東欧諸国への構造転換の費用などが含まれている。
 日本国内に目を向けると、菅 義偉 首相は、10月26日の所信表明演説で、温室効果ガス排出を2050年までに全体としてゼロにする目標を表明された。しかし、その前の2018年、環境省が提出して閣議決定された2050年のエネルギーミックス想定の時点での温室効果ガス80%削減でさえ、電源の90%ぐらいを再生可能エネルギーにしないと達成できないという実情がある。
 ポテンシャルの面で言うと、日本は遠浅の海がないという意見がよくあるが、調べてみたところ、年平均風速毎秒7メートル以上の20平方キロメートルぐらいのまとまった土地で、大体12万キロワット以上の発電所ができる場所が着床式だけでも日本の沿岸に1億3000万キロワット分ある。漁業やフェリー航路等いろいろな経済活動がある中で、このうち3分の1ぐらいはうまく工夫して使えるであろうということで、3000万キロワットから4000万キロワットぐらいは着床式での建設が可能と考えている。
 協会としては、2030年に洋上風力発電で1000万キロワット、陸上風力発電で1000万キロワットの合わせて2000万キロワットを目標とし、2040年は、産業の熟成度次第だが、洋上風力発電で3000万から4500万キロワットを目標にしましょうと政府に提案している。一丁目一番地の導入目標は、現在協議中であるが、年内には政府から正式な発表をしていただきたいとの働きかけをしている(※1)。海外からの投資や技術提携先として日本の企業を選んでもらうためには、安定した市場、将来的にこういう市場があるという蓋然性を示す必要があり、こうした導入目標が大事になってくる。
 ただ、洋上風力発電は、大規模発電で、また、九州と東北、北海道といった風のある地域が偏在していることで、遠隔地に造る大規模発電所ということになる。このため、広域の消費が不可欠となり、系統の問題が出てくる。現在は、電力会社が、不可侵条約の形で域内の需要と供給をバランスさせている状況で、基本的には系統の一体運用がなされてない状態。電力会社と話していると、陸上での送電線整備には12年かかると言われており、これでは、2030年に1000万キロワット導入することが間に合わなくなってしまう。このため、4年、5年ぐらいでできる海底送電線を引いて原子力発電所の既存送電線とつないで首都圏に持ってくる方が良いと考えている。九州の方だと関西電力の福井の原子力発電所の既存送電線につなぐという形になると思うが、できるだけ早く、全国での系統運用ができるように、という話をさせていただいているところ。
 また、洋上作業が長引けばコストがそれだけかかるので、できるだけ陸上でタワーを完成形にし、タワーとナセル(※2)と3つのブレードの5分割で洋上に持って行き、ぽんぽんぽんと置いていくことがコストを下げる最大の要因となるので、このようなことができる港湾設備のインフラ整備が必要となってくる。
 洋上風力発電の産業としての魅力についてであるが、モノパイルと言われる海底に打つ大きな基礎が必要で、これは、直径が大体8メートルから10メートルぐらい、長さが大体70メートルから80メートルぐらいのもの。そうすると、1本1500トンから2000トン近い重量の基礎が要るわけで、毎年、ざっと言えば100本ぐらい要るので、15万トンから20万トンの基礎用厚板として多量の鋼材の需要が出てくる。既存産業である製鉄、造船、鉄鋼等を再活性化させる。そして、真円にして、この70メートルくらいのものをゆがみなく、溶接の亀裂がないように地面に打ち込んでいくという非常に困難で高度な技術が必要で、現実には、ヨーロッパではドイツとオランダの業者だけが行っている。その品質管理からすれば、労働集約的なものではなく、先進国でしかできない産業である。現在、日本には、風力発電の風車メーカーはないが、2000キロワットなどの陸上のものであれば経験者はいるので、その要素技術などは持っている。また、日本には、潜在的な技術力とものづくりの基盤があることから、洋上風力発電産業形成のポテンシャルを有している。
 洋上風力発電向けには、相応の投資が必要となってくるが、中長期導入目標があれば、市場形成の期待感から関連産業の設備投資が進展するものと思っている」

※1
12月15日、政府は、陸上と比べて安定して発電できる洋上風力発電を将来の主力電源の一つとして位置づけ、発電能力を2030年までに1000万キロワット、2040年までに3000万から4500万キロワットまで拡大することを目指すという導入拡大に向けた計画の案をまとめたことが発表されました。
※2
タワーの上にあり、ブレード(羽)につながる発電機等を格納する保護カバー。

質疑を行う 松本 國寛 理事

 最後に、閉会に当たり、森下 博司 理事が「脱石炭社会実現に向けて、日本での洋上風力発電の可能性、そして、SDGsの観点からも大変意義があることを、また、同時に、課題があることも教えていただいた。洋上風力発電は、大規模な自然電源で、経済性の確保、さらに経済波及効果等多くの利点があり、再生エネルギーの主力電源として期待されているということに、特に感銘した。九州の自立を考える会では、引き続き、九州の成長発展に向けて、会員をはじめとした九州の政財界、行政機関の皆様方と連携しながら、九州は一つという思いで取り組んで行くので、ご理解とご支援をお願い申し上げる」と挨拶し、盛会のうちにセミナーは終了しました。

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